お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

35話 クリスマスはもうすぐ


拓海とのメール交換は少しずつだけれども、
着実に間隔が広がっていった。
その隙間を埋められない焦りがだんだん深まるある日、
ハートをキュッとつかまれるようなメールがきた。
「忙しくて日帰りになるけど、23日に少し会えない?
前回来てくれたから、今度はぼくが東京へ行くよ」

やった! ひさびさに拓海が東京へ来てくれる!
クリスマスのイルミネーションがきらめく街の、
どの辺りで拓海と会おう? 一緒に過ごそう?
でも。もう一度メールを読み直したとき、
こめかみをピンと弾かれるような奇妙な感覚があった。
少し会えない……? 
拓海は今まで、2人で会う時間をとても大切にしてきたから、
例えクリスマスみたいな記念日でも、ちゃんと時間がとれるまで、
日にちをずらす人だった。それが今回はなぜ?
「大丈夫だよ、何の証拠もない。ただの気のせい」
だけど……万一のことを考え、彼にこう返事を打った。
「わたし、拓海の住む町が大好きになったから、
もしよかったら、もう一度そっちへ行ってもいい?
少しでも、長く会っていたいし」
「いいよ。菜々子に来てもらえれば、ぼくもうれしい」

実は拓海は、彼の住む町で見ればすてきなのに、
東京では今ひとつ借り物っぽい、ちぐはぐな感じがする。
でもわたしが彼の住む町に行くのは、それが理由じゃない。
あの町に行ける機会が限られている予感がするから。
現に向こうへ行ってからの予定は、空白だ。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

お役立ち情報[PR]