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34話 言い訳


篠田さんとはそれから、3回会った。
計算すると2週間に1度以上、会っていることになる。
でもね、東京にはそれだけいい美術展が、
ううん、絵だけじゃない、彫刻でも写真でも、
目の覚めるようなステキなものがたくさん見られる。
ただそれだけのことなのだ。
メールの交換が前より多くなったのも、
待ち合わせの場所を決めたり、感想を言い合ったりするため。
別に篠田さんが好きだとか、もっと一緒にいたいとか、
そんな理由で連絡したり、会うわけじゃない。
もしそんなムードがほんのりと漂っているとしても、
ほら高村課長のときと同じ、ほんの一時の気の迷いに
……決まっているじゃない。

部屋に帰って、拓海の写真にそう言い訳する。
だけど肝心の生身の拓海とは、
メールの交換もいまだ盛り上がりを欠いたままだ。
ヘタをすると、まる1日まったくメールを出さない日もある。
もちろん、向こうからもこない。
おそろしいのは、自分がそれでなんとも思わないことだ。

大学時代からずっと、あんなに拓海が好きだったのに。
わたしはこのまま変わってしまうのかしら。
「いやだ、拓海……今すぐ会いに来てよ」
でも写真には呼びかけられても、メールには書けない。
自分でもそのことが、ひどく不思議だった。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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