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31話 みっしり


結局、篠田さんの誘いには応じることにした。
2人で会うっていっても、場所は美術館。
他にも人がいる場所だし、見るのは名画だから、
男と女って雰囲気になることもないはずだ。
「行っても、いいよね?」
拓海の写真に問いかけても、当然、返事はない。
苦笑いをしながら「ごめん」と小さくつぶやいた。

当日は、地下鉄の改札前で待ち合わせ。
しかし美術館の前まで行って、驚いた。
入り口が、かなりの人出でごった返している。
「美術展に出かける人って、けっこう多いんだね」
「そうかな。今回は内容のわりには、
土曜日なのに入場待ちの行列もないし、すいてると思う」

美術館に来る人は、老若男女さまざまだ。
若いカップルもいれば、年配のご夫婦、
さらには外国人に、美大生らしき人も。

会場ではそうした人たちが、絵画の前にびっしりと人垣を作り、
少しずつゆっくりと順路に従い移動していく。
たしかに入場するのに行列はなかったけれど、
絵画を見ること=巨大な行列の一部分になることだった。
そんな中、篠田さんにはぐれないようにすると、
かなりぴったりと、寄り添うことになってしまう。
現に今彼は、背中に体温を感じるくらい、すぐ後にいる。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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