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28話 暇つぶしのはずが


となりの席の男性は、篠田修治というらしい。
よく見るとメタルフレームの眼鏡と、顔の輪郭と、
座った感じだけだけれど、背格好が拓海とそっくりだった。
でも声と言葉のイントネーションが、大きく違う。
「出身は関西よね。でも大阪でも京都でもなさそう」
「どこだか当ててみて」
「うーん、わたし関西よく知らないんだ。奈良とか?」
「残念、福井県。生まれたのはすごく雪の多い町」

その話し方の独特のリズムについ引き込まれ、
他の人も交えて、いろいろと話し込んだ。
勤務先の大手精密機器会社の研究室は、かなりユニークだ。
「納期までに仕上がりが見えないと、だんだん焦りが出て、
急にいつもと違うことをし始めるヤツも多い。
昼休みに走ったり、ヨガやったり、カップ麺を3杯も食べてみたり」
「ひゃー、カップ麺3杯は胸焼けしそう」
「でもコイツみたいにいつも冷静で、同じペースのヤツが、
やっぱり早く精確に要求されたものを出してくるよ」
同僚から指された篠田さんは「人をロボットみたいに言うな」
と笑ったが、その姿はどこか誇らしげだった。

合コンが終わり、店の細い階段を下りるとき、
篠田さんはわたしに小さな声で、でもはっきりと言った。
「よかったら、ぼくとお付き合いしません?」
え、そんないきなり……って、
でもわたしも高村課長に同じことしたんだっけ……。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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