お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

19話 その心は


「まあな。『ついてる時』って、そんなもんだ。
でもプレゼンに通ったのは、そのせいばかりじゃないと思うよ」
高村課長はここで「生おかわり、4つ!」と大きな声で、
店員さんに向け、ジョッキを上げた。
「だって全員が、クライアントの顧客を第一に考えてたろ。
それって案外ないんだよ。どこの社も儲けたいからさ」
そうか。クライアントに真心が通じたから、成功できたんだ。
そう信じられることが、素直にうれしかった。

そのあとの2次会は、有志でカラオケに行った。
みんな意外と勝手に曲を入れ、人の歌なんて聞いてない。
この勝手気ままさが、ウチのメンバーのよさだろう。
わたしはプレゼンが通ったことに満足しきって、
歌わずにひたすらお酒を飲んでいた。

騒がしい時間がお開きになると、わたしは高村課長とふたり、
地下鉄で帰ることになった。他はみんなはJRだった。
街灯の明かりで、課長とわたしの影がアスファルトに長く伸びた。
課長もいい加減、酔っ払っているみたいだった。
「今回、水波には厳しくしたからな。うらんでるだろ」
「いえぜんぜん。わたしあれは愛だと思ってましたから」
「そうか、伝わったか。うん、実はあれは愛なんだ」
横を見上げると、課長と目が合った。
そのとき、胸の奥にあった、
言いにくいはずの言葉がするりと飛び出してきた。
「高村課長、好きです。内緒で付き合ってください」
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

お役立ち情報[PR]