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15話 ベストをつくせ


会議室に入ると、さっきまでの動揺が嘘のように静まった。
そこには、今まで何度も打ち合わせをした、
クライアントの顔がある。
この人たちと、その顧客によいものを提供したい。
そう思って、今までがんばってきた。
なのに……バカみたい。
自分の気持ちの中だけで成功を焦って。

一瞬だけ高村課長を見ようとして、でもやめた。
そんなことより、気にかけるのは目の前にいる人たちだ。
わたしは居並ぶクライアントに向かって微笑んだ。
「本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます。
さっそくですが、弊社の企画した携帯サイト案を、
ご説明させていただきます」

クライアントへの解説は、わたし。
パワーポイントを扱うのは、高村課長。
「逆でなくていいんですか?」とたずねたら
「携帯サイトの企画だから、水波がいい。
感度のいい若者が企画をぐいぐい引っ張れるなら、
クライアントも頼もしいと感じるはずだ」
と、答えが返ってきた。
そうだ。自分の成功より、顧客の満足が大事。
そう考えて動いた方が、きっと爽快なはずだ。
それに高村課長は、たとえ視界に入らなくても、
そこにいる存在感だけで、十分勇気を与えてくれる。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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