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14話 パワハラさせろ


受け付けに出てくれた若い女性の後に従い、
わたしと高村課長はミーティングルームという部屋に通された。
簡単な衝立で区切られたテーブルがいくつも置かれた部屋だ。
座って待つと、同業他社が次々に案内されてくる。

心臓の鼓動が、だんだん大きくなってきた。
暖房はさほど効いていないのに、ひどく暑い。
そのうち吸っても吸っても肺に空気が入らなくなり、
天井がグルグル回って、わたしは恐怖のあまり椅子を立った。
「助けて、課長、助けてください!」
「水波、落ち着け。大したことじゃない」
高村課長がわたしの横に回り込み、静かに語りかける。
そうしてカバンから取り出したビニール袋をくれた。
「その中に、自分の吐いた息を入れて吸うんだ。
落ち着いてゆっくりやれ。必ず治るから」
しばらく課長に言われた通りにしていると、
やっと視界と呼吸が正常に返った。

やがて先ほどの女性に呼ばれ、わたしと高村課長は、
プレゼンのため会議室に入ることになる。
「おい、訴えてもかまわないから一発パワハラさせろ」
課長の言葉に「えっ?」と振り返ると、
いきなり背中をバシンと叩かれた。
そのとき、半分昇天しかけたわたしの魂がピタッと体に戻った。
「いつも通りの水波でいけ」
わたしは元気よく「はいっ!」と答えた。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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