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13話 蒼白


翌日、目が覚めたのは、やはり午前5時30分だった。
昨日は課長と2人で終電まで、
レジュメやパワーポイントの変更作業をしたというのに、
意外に目覚めは爽快で、心身ともに気分がいい。

高村課長は昨日、コピー機に向かいながら言った。
「まあ、みんながいないから言えることだが、
あのくらいのミス、誰でもやるから気にするな」
「いえ……そんな、申し訳ないです」
すると課長は、横顔でまたニヤリと笑った。
「こんなことぐらいで萎縮するなよ。
水波は、最近の若いのにはめずらしく、
欲が深い。欲は成長に大事な要素だ。
自分を大切にできれば、もっと大きくなれるさ」
わたしは「いえそんな」と言いながら、
内心すごくうれしかった。
最初、わたしにとっての仕事は、
拓海のいない心の隙間を埋めるための作業だった。
でも今では野心もある。もっと力をつけたい。

とはいうものの。
クライアントの会社があるフロアに上がった途端、
全身から冷や汗がどっと出てきた。
受付の内線電話を押す指が、驚くほど震えている。
「大丈夫かよ」と笑っている高村課長に、
わたしも「へへへ」と笑ったが自信がない。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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