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11話 ハリノムシロ


「というわけで、みなさん、申し訳ありません」
翌日わたしは、誤って下請け会社の見積書を
クライアントに渡したことを、
プロジェクトのメンバーを収集して、正直に話した。
案の定、みんな驚くと同時に、ひどくがっかりしている。
以前ミスを指摘した後輩など露骨に敵意のある表情だ。
無理もない。プレゼンはもう明日なのだ。

「でも失くしただけ、という可能性も残ってますよね」
小牧美恵子が、フォローの発言をしてくれた。
すると、今まで無言だった高村課長が言う。
「曖昧な情報が元では、効果的な動きができない。
そうだな。オレが今、電話をかけてみよう」
そう言ってクライアントへ電話をかけ始めた課長が、
怒っているように見えないところが、また不気味だ。

「はい、お忙しいところ申し訳ありません。
実は一件、確認させていただきたいことがありまして……」
わたしを叱るときとは、別人のように温和な声で、
課長は先方と話をした。
しばらくして話し終わった課長が、携帯をパチンとたたんだ。
「貴重な資料をありがとうございました、だとさ」
「本当に、申し訳ありません」
わたしは泣かないでいるのが、やっとだった。
「まったくあり得ないミスだ。だがこのミスは使える。
時間はないが、プレゼン資料の書き換えをしよう」
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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