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10話 写真の中のあなたへ


「落ち着いて考えなきゃ。気のせいかもしれない」
先ほどクライアントに渡したプレゼン資料に、
本当に下請け会社の見積書が入り込んだのか。
できれば今すぐ駅のベンチでカバンを開け、
見積書の確認をしたい。でもベンチは狭いし薄暗い。
家について広い場所でゆっくり確かめなければ。

わたしはカバンを胸に抱いて、小走りで帰った。
鍵を開けるのも、もどかしく家に入る。
正本1部とコピー2部があれば、わたしの勘違いだ。
カーペットの床に座り込み、カバンから見積書を探す。

ない。見積書のコピーが1部足りない。

わたしは目を閉じ、床に寝転んだ。
「気づかないフリをしようか」
何も言わなければ、誰にも知られずに終わるかも。

でもふっと目を開けたとき、写真立ての拓海と目が合った。
そうだね。拓海なら絶対、しらんぷりはない。
わたしは起き上がって書類をカバンにしまい、携帯を手にした。

拓海にメールを……でもきっと心配するだろうな。
確率は低いけれど、軽蔑される可能性もある。
「ごめんね」
わたしは小さくつぶやいて、携帯をテーブルに置いた。
水波菜々子(27)
学生時代に出会った拓海と遠距離恋愛中。仕事は携帯サイトの企画営業。
野田拓海(27)
地方に本社を持つ精密機械の部品製造会社勤務。本社に抜擢され転勤。
高村直樹(35)
菜々子の上司にあたる、営業課長。仕事にはとても厳しいが……。
小牧美恵子(24)
同業他社から菜々子の会社に転職してきた新人。
篠田修治(28)
大手精密機器会社の研究所に勤務。趣味はアート鑑賞。

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