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89.亜佐美

亜佐美と名乗るその女性は看護師さんにそう告げると瑞希をチラッと一瞥し看護師さんに案内されるがままに哲平のいる治療室に入って行った。初めて見る亜佐美は瑞希が想像していたよりずっと体格もしっかりしていてこの状況下でも動じない芯の強さのようなものを感じさせた。ピアノの先生というからもっと儚げでお嬢様風な女性を勝手に思い描いていたのだ。
哲平の幼馴染の彼女は哲平の田舎の両親に頼まれ、駆けつけた。そのことは看護師にも伝わっていたらしい。ますます情けなかった。

瑞希と哲平を隔てている治療室の扉の壁は厚かった。
結局、瑞希はこの日、哲平には会えないまま、ある定食屋の前に来ていた。
お世辞にも綺麗とは言えない店だ。「本日定休日」の札が悲しく揺れている。


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