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37話 冷たいメール


それから2週間がすぎた。私は日々の広報業務の合間をぬって、
誕生石シャンプーの開発にも協力し続けていた。
その間、藤木さんにメールを何通も送った。
だけど、返ってきたメールは、たった1通。
『仕事がんばって。こっちは、しばらく忙しくなりそう。藤木』
まるで、メールをよこすなと言わんばかりの、冷たい内容。
あの夜のことは何だったの? 単なる気まぐれ?
手をつないで感じた小さな愛情、あれは私の錯覚だったの?

寂しさに耐え切れなくなると、私はあのバーを訪れた。
ブパサニワット——ここにいると、藤木さんとつながっている、
そんな気がしてなぐさめられる。
何度も通ううち、カウンターの女性ともすっかり打ち解けた。
彼女の名前は千紘さんといい、40歳まで会社勤めをして、
退職金と貯金でこの店を開いたのだという。
ある夜、千紘さんは「藤木さんのことが好きなのね」と私に言った。
『藤木はやめておけ』きっと、この人も
古川さんと同じことを言うのだろうと思った。ところが——。
「よかったね」と千紘さんは言った。「本気で人を好きになれる
ことなんて、人生にそうたくさんあるわけじゃない」

救われた、と思った。
報われそうにないこの想いが、千紘さんの一言で救われた。

そして3週間目の月曜日、藤木さんからやっとメールが届いた。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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