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木々を揺らす風-9

インターフォンからは「岡部です」と張り詰めた声がした。
潮の勤めるデザイン事務所の名前と同じだ。

ドアを開けると、髪をきれいにアップにした女性が立っていた。
「突然でごめんなさい。あの、潮と別れてくれませんか」

いきなりいわれて、反射的に怒りが湧いた。
なんて安っぽい言葉。礼儀知らずだし頭がいいとも思えない。

「麻理さんでしたっけ。とりあえず中に入ってください」
うなずく女性を、わたしは潮とふたりで暮らす部屋にあげた。

当然、帰ってほしかったけれど、どんな女か知りたくもあった。
それに、彼女にはぜひ確かめなければならないことがある。

氷の入った麦茶を出すと、おたがいしばらく何もいわなかった。
が、彼女が最初に口火を切った。

「あの……わたし、潮さんの赤ちゃんがお腹にいるんです。
 もう産むしかありません。どうしても別れて欲しいんです」

やっぱり。潮はツメが甘すぎる。
これで彼はわたしと別れて、このコと結婚を……。

とたんに世界がぐらりと回り、
わたしの脳裏には潮との思い出があれこれと蘇った。

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