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木々を揺らす風-8

「転職する」といい出してから、潮は妙にイキイキしている。
でも新しい職が簡単に見つかるんだろうか? それに……。

「ねえ、正直に答えて欲しいんだけど」
夜、寝入る前に声をかけると、Tシャツの背中がびくりと動いた。

「麻理さんっていう人と、まだ付き合っているんでしょ?」
「そんなわけないでしょ。彼女にはちゃんと別れ話をしたよ」

でも……。彼が今のデザイン事務所に勤め続けられるということは、
麻理さんとはまだ別れていないということでは?

潮はクリエイティブ系の仕事をしているせいか、
大学を卒業して3年近くたった今も、学生のように若々しい。
これまでずっと、そんな潮に惹かれてきたが、
今は逆にその若々しさが頼りにならない弱さに見える。

案の定、一カ月がズルズルと過ぎた。

そうしてある日、先に帰ったわたしは、
台所で夕飯の支度をしながら急に胸騒ぎを覚えた。
アパートの外廊下で潮とは違う誰かが、立ち止まる気配がしたのだ。

廊下での傘を立てかけるカサカサという音におびえていると、
ドアフォンの音が室内に鳴り響く。

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