お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

木々を揺らす風-6

「いらっしゃいませ」
開店の時間、昇りエスカレーターの前でお客様におじぎをする。
何事もなかったような、いつもの朝。

わたしのいる家具売り場には、意外に早くお客様が訪れる。

子どもが成長したから、ベッドやタンスを買い換えたい。
家の購入や建て替えをするので、家具を新しくしたい。

フロアを訪れるお客様は、顔をほころばせている方ばかりだ。

こんなに辛いのに、お客様から幸せを分けてもらえるので、
接客中笑顔を作るのに、さほど苦労はいらなかった。

でもお客様が帰られると世界中でわたしだけが、
ひとりぼっちで置き去りにされたよう。

昼休みはあいかわらず潮からのメールや着信があるけれど、
でもそれが何? 言葉だけの言い訳なんて意味がない。

だけど仕事が終われば、今夜は家に帰らなくては。
着替えもあるし、お金も取りに行かなくてはだし、
それに心の弱いわたしは、やはり彼にもう一度会いたかった。

憎くて悔しくて仕方ないけど、でも彼がどうしても好きなのだ。

お役立ち情報[PR]