お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

木々を揺らす風-1

新しい部屋に越して2日目、一晩中荒れた天気は、
夜明けとともにおさまり、外は静かに夜明けを向かえていた。

わたしは起き上がってベランダに出ると、
少しだけ身を乗り出して、雲間から昇るまぶしい朝日をながめた。

雨雲は遠く逃げ去り、目の前に広がる大きな公園は、
深緑の木々を湖のようにたたえ、かすかに森の匂いを放つ。

慣れない部屋でごうごうと鳴る風におびえながら、
ベッドで体を丸めていた昨日の夜が嘘のようだ。

思い切ってこの部屋を借りて、本当によかった。


わたしは飽きるまで朝の光を浴び、
木々の香りのする涼しい風に吹かれると、
部屋に戻ってパソコンの電源を入れた。

大きなフォントで「野田 寿賀子」と打つ。表札にするのだ。
だがプリントすると「寿賀子」を切り取り「野田」だけを残した。

女の一人暮らしだとは、わからない方がいい。

こうして自分の苗字を表札のプレートに貼り付けた時、
一人暮らしの始まりを、はじめて実感できた気がした。

お役立ち情報[PR]