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最終話 信じてる


翌日、営業へ向かう電車に私は宗田くんと並んで座っていた。
宗田くんは明らかに緊張している。
はじめて宗田くんが作った4つのプランのプレゼンが待っている。
しかも、相手は厳しいとうわさの社長。
新人でなくても、緊張して当然だろう。
そう思っていたら、宗田くんがぼそりとなにかをつぶやいた。
聞き取れずに聞きなおすと、泣きそうな目をこちらに向ける。
「昨日はすみませんでした。あの、忘れて、ください」
「え、プレゼンで緊張してるんじゃないの?」
「あ、もちろんそれも不安ですけど。まずは、謝りたいと」
私は、思わず噴出してしまいそうなのをこらえた。

「あっ」
私が声を上げると、宗田くんはさらに不安げな目になった。
「両思い切符」
私が手にしていた切符の番号は、8718。
左と右が同じ数字の両思い切符だ。
「駅でこれもらって、宗田くんにあげるよ。この前のお返し」
私は、定期入れの中から、両思い切符を出した。
はじめて2人で営業に行ったときに、宗田くんがくれたものだ。
「だからプレゼンがんばって。宗田くんはできるって、信じてるから」
「はい!」
宗田くんは、また後輩らしい笑顔で元気に返事をした。

宗田くんとこれから笑顔で歩いていけるってことも、信じてるよ。
宗田くんの笑顔を見ながら思ったけれど、
その言葉は、今は口に出さずに心にしまっておくことにした。

(おわり)

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