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39話 誰のせいにも


私が言うと、遼子は慎重に言葉を選ぶように言った。
「みんな、不安なんだよ」
遼子はいつも我が道を行っている。仕事をやめるときだって迷いを私には
見せなかった。だから遼子の実感のこもった言葉は、意外だった。
「不安じゃない人なんていない。
だって、誰も未来のことはわからないんだもん。
でもさ、不安だから、自分の人生を自分の足で生きてるんだよ。
占いのせいにも、誰のせいにもできない、自分の人生を」
言われて気づいた。
私は、占いで安心を得るのと同時に、言い訳を常に用意していた。
占いを信じていれば、うまくいかなくてもそのせいにできる。
「自分で決断をすることは、本当に怖いことだけど、
自分で決めたことだからこそ、がんばれる。
今こそ、自分の道を歩きはじめるときなんじゃない?」
遼子は、客に呼ばれていきながら、穏やかにそう言った。

今まで、自分の道を歩いていると、実感したことがあっただろうか。
思い出したのは小学生のころの出来事だった。
幼い宗田くんの逆上がりの練習を、毎日手伝った。
クラスの友達に誘われても断って、自分の意思で鉄棒の横に立っていた。
この子は絶対に、逆上がりができるようになる。そう、信じられたから。
私は今、自分が幸せになることを信じて、歩き出さなければいけない。

「遼子、ごちそうさま」
立ち上がった私を、遼子は笑顔で見送ってくれた。「いってらっしゃい」
遼子の言葉に私も笑顔を返す。「いってきます」
店の外には、新しい道が伸びているように思えた。

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