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35話 シェイク10杯


ファーストフードの店の中でパソコンと資料を見比べていた宗田くんは、
向かいの席に私が腰を下ろしたことにも気づかなかった。
「ろくに寝てないんでしょ。また救急車で運ばれるよ」
私の言葉に、宗田くんは飛び上がりそうなほど驚いていた。
「ばれちゃいました?」と宗田くんは頭をかく。そんなに目の下にくま
をつくったら、課長は気がつかなくても私は気づくに決まってるのに。
「プラン案4つ出す締め切り、明日まででしょ。手伝うよ」
私は、自分の鞄に手を入れた。実は、簡単ではあるけれどプラン案を
3つ考えてきたのだ。おかげで、私も昨日は徹夜だった。
きっと目の下にくまができてる。こんなところでペアになるなんて。
でも、後輩のピンチだから仕方がない。そう、課長にも頼まれたし。

それなのに、宗田くんは首を横に振った。
「ちょうど今、完成したところです」
宗田くんはそう言って、パソコンをこちらに向けた。
私は画面を見て思わず目を丸くした。
本当に、プラン案が4つできていた。しかも、やっつけ仕事じゃない。
どれもすごく丁寧で、クライアントを考えていることが伝わってくる。
「すごいよ、宗田くん……シェイク10杯おごってあげる」
私が画面から視線を上げないまま言うと、
宗田くんは「おなか壊しますよ」と声を上げて笑った。
でも私は笑えなかった。感動していたのだ。
私は、宗田くんのこと誤解していた。口先だけだって思い込んで。でも、
実力が伴わず一番苦しかったのは、宗田くん自身だったのかもしれない。
「やっと自分の力で達成できました」
宗田くんは、安心したようにつぶやいた。
私は作ってきたプラン案を、鞄の中に押し込んだ。

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