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30話 ひとりでできる


しぶしぶ課長のところへ行くと、課長は私を笑顔で迎えてくれた。
課長が私を信頼してくれていることは嬉しい。
でも、これまでの経験を振り返ると、
課長がこんな笑顔を見せるときはろくな頼みごとじゃない。
「清美ちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど」
隣に立つ宗田くんは黙っている。どんな表情かはわからない。
でも、昨日の喫茶店で見せたような情けない表情が思い浮かぶ。

課長は笑顔をくずさず言った。
「宗田が、今週中にクライアントに対して新しいプランを
4つ持っていくと約束しちゃったらしくて」
「4つ? なんでそんな」
「多い選択肢から決めたいと、クライアントが言ったそうだ。それで
自分から『4つ持ってきます!』って言っちゃったんだよな、宗田」
宗田くんの返事はない。課長は特に気にしない様子で、私を見た。
「新人が1つ持っていくのも手一杯なのに、4つなんて無理でしょ。
ちょっと、清美ちゃん手伝ってあげて。
いや、手伝うというよりも、3つ作ってあげてくれないかな」
資料を見せてもらうと、宗田くんはいきなりうちでは未開拓の業種の
会社に挑戦したようで、今までの使い回しは難しい。
どうして、そうチャレンジ精神あふれすぎてるんだか……。
自分の仕事もあるのに、プラス3つのプランは大変だけれど、
引き受けなければ仕方ないかと思ったときだった。
隣にいた宗田くんが、はじめて声を出した。
「やります」
私と課長が、思わず宗田くんのほうを見る。
宗田くんの顔は、私が思っているよりもずっと頼もしかった。
宗田くんはもう一度繰り返した。
「僕ひとりでやります。なんとしてもやります」

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