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15話 乾杯


翌週の金曜日。それは、宗田くんの研修期間の最後の日でもあった。

来週からは、宗田君もひとりで営業に行くことになる。
つまり、2人で営業先を回るのも今日で最後だ。
もちろんすでに運命の人でないことは明確だったから、
特に感慨深いことはなかった。
この2週間、すぐに宗田くんは「すぐにできます!」とか
「清美先輩ならできるはずです!」と営業先で口にして、私を困らせた。
とんでもない後輩だ。
でも、おかげでユーアールとの契約は順調に進んでいたし、
ほかにも契約につながる可能性が見えてきた会社がいくつかあった。
宗田くんはいつか力が伴えば、いい営業マンになるかもしれない。
もちろん、これまで通り口だけじゃ最悪の営業マンだけど。

「清美さん、ちゃんと今日の夜、あけてくれてますか?」
金曜日、昼食を2人で食べていると、宗田君は笑顔で言った。
“ウキウキ”という言葉がぴったりだ。
私は悩んでいた。はっきり言って2人で飲みになんて行きたくないけど、
研修が終わるときはその先輩と後輩で飲みに行って振り返るのが恒例だ。
「誕生日じゃなくて、研修お疲れ会という名前ならいいよ」
私はあくまで冷めた口調で言ったつもりだったのに、宗田くんは
「名前はなんでもいいです!」と飛び跳ねそうなほどウキウキしてる。
なんでこんなに喜ぶのかがよくわからない。
人間に人一倍なつく子犬みたいな後輩だ。

入った居酒屋で、私たちはジョッキをつきあわせた。
「清美先輩、お誕生日おめでとうございました!」
「研修お疲れさま」
それぞれバラバラの言葉で乾杯をして、ビールを口にした。

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