お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

24話 圭子の事情


圭子の口からでてきた言葉は、予想もしないものだった。
「私には、5歳になる子供がいます。日中は保育園に預けて会社にきています」
独身だと思っていた圭子のその言葉に驚き、思わず聞いてしまった。
「木戸さん、結婚してたんですか」
「えぇ。今はしていませんけれど」
さらりと圭子は答えたが、それは離婚したということなのだろう。
「子供を育てるには、一定の経済力と時間がどうしても必要で」
そうか。それで、圭子は派遣社員という働き方を選んだのだ。
栄一は話を聞いて、圭子を責める気持ちがすっかり抜けてしまったようだった。
「そんな事情が……言ってくれてたら、もっと協力できたのに」
急に同情的になった栄一に、圭子は告げた。
「個人的な事情を職場に持ち込むのはどうかと思いましたので」
またも、突き放すような言い方。思わず栄一の表情も固くなる。

でも、次に続いた言葉は違った。
「でも、今お話しして……少し気が楽になりました。
いつも、定時きっかりに帰るのは、心苦しかったですから」
この言葉を聴きたかったのだ。圭子の理屈でなく、本当の気持ちを。
「木戸さん、話しにくいことも、話してくれてありがとう。
俺も木戸さんが働きやすいように、時間には気をつけるから」
「そうしていただけると、助かります」
最後まで固い口調で締める圭子に、思わず小さく笑ってしまった。
「あ、すみません! 私、またこういう言い方を」
そう言って、圭子も表情をくずす。はじめて見る圭子の笑顔だった。


お役立ち情報[PR]