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20話 恋ができない生き方よりも


NYではじめて会ったときから、なぜか懐かしい気がした。
懐かしくて、胸がしめつけられるような……。
あれが、ブパサニワットだったのかもしれない。
前世から結ばれると決まっていた運命を感じる奇跡の瞬間——。
あのとき、藤木さんもブパサニワットを感じたのだろうか?
それとも単なる私の独りよがり?

カクテルグラスに、ドライマティーニが注がれた。
真ん中に、ピンを刺したオリーブがひとつ。
「じゃあ、乾杯」
グラスを口元に持っていきながら、藤木さんの顔をじっと見た。
不思議なくらい、いつも、私の視線は彼に引きよせられる。

「恋愛なんて思い込み」と藤木さんは言っていたけれど、
思い込めるほどの強い引力があるのなら、それは素敵なことだと思う。
恋ができないドライな生き方よりも、熱く胸を焦がしていたい。
だけど、藤木さんの視線は私ではなく、
カクテルグラスの中に向けられている。
寂しさを隠し、ドライマティーニをゆっくりと飲んだ。
ジンとベルモットが、のどを焼くように流れ落ちていく。
その強さが、胸の痛みを少しだけ忘れさせ、私の口を開かせた。

「NYではじめて藤木さんに会ったとき、
どこかで会ったことがあるような、そんな気がしたんですけど……」
藤木さんの視線が、私に向けられた。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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