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その大きな手で-12

そうしてわたしはその夜、准の家に行ってさんざん愚痴った後、
彼の胸に顔をうずめて眠ることになる。

31歳になる准の体からは、温室の匂いがした。
いつでも受け入れてくれる彼の、その強さはわたしにはない。
でも今は、そんなことは忘れて眠りたかった。

わたしが辞めさせた……のかもしれない新人君には、
きっとこんな風に甘えさせてくれる誰かが、いなかったのだろう。

そう思うと、はじめて彼に「かわいそうなことをしたな」
という気持ちが湧いてくる。

翌朝、目が覚めると、わたしの隣には誰もいなかった。
そのかわりに台所の方から、コーヒーのよい匂いがした。

「俺、もう出るから。鍵だけはかけていってね」

わたしの好みに煎れてあるカフェオレのカップを
両手で包み込むように持ちながら思う。

きっと新人君も、准みたいな人に教えられたなら伸びたんだろうな。

頼りない……なんていいながら、きっとわたしには、
准から教えられることが、まだまだたくさんあるのだろう。

(おわり)

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