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その大きな手で-1

31歳になる准(じゅん)からは、温室の匂いがする。

こうして彼の胸に頭を預けていると、木や草の芽が伸びようとする時の、
やわらかくも瑞々しく、少し野蛮な力を秘めた匂いで満たされる。

とても強く匂うわけではないのだけれど、
しっかりと鼻腔の奥深くまで届く気がする。

そして大きな手で髪をゆっくり撫でられると、とても心安らぐ。
  准のいちばん好きなところは、この大きな手で、
2番目が彼のかすかで瑞々しい匂いだと思う。

「晴香……少し、落ち着いた」
「うん」

でも悔しい。
29歳まで司法試験の勉強をしていた彼には、社会経験が2年しかない。

今は司法書士として働いていて、とても尊敬できる仕事ぶりだけれど、
ひとりの男性としては、頼りなさすぎる。

正直、准は、もっといい男を捕まえるまでの「つなぎ」だったはずなのに。

気がつくと、ここ1年ぐらい彼にどっぷりはまってしまっている。

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