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風の向こうへ-12

男の人は、ポケットから使い捨てカイロを取り出すと、
ウエアの上から押し当てて、ゆっくり揉み出した。
徐々に少しずつ、痛みが遠のいていく。

「ありがとうございます、助かりました」
「水分補給しながら走った方がいいですよ。冬場は特に意識して」

痛みが治まってくるとあらためて、自分のパニック具合が恥ずかしい。
そしてだんだん、冷静になってくる。

「ぼく、高峰といいます。今度、よかったらいっしょに走りませんか」
なんだ、新手のナンパか……。引っ越してきてすぐの一人暮らしの女としては、
ここでこの状況だと断りづらいんだけど。

「地元のランニングチームで、初心者大歓迎なんです。
 フリーや自営業で土日に休めない会員が多いんですけれど、楽しいですよ」

高峰さんは胸のポケットから名刺を差し出してきた。
メーリングリストのメールアドレスが書いてあるらしい。

「さて、これで歩けるようにはなったでしょう」
丁寧にお礼をいうと、高峰さんは笑顔で去っていった。

たぶんわたしは、このランニングチームに参加するだろう。
次の恋愛はともかく、新しい人間関係ができるのは、大歓迎だ。

(おわり)

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