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17話 彼女へのいらだち


何人かが帰ったのをきっかけに、会はお開きになった。
気の合う人どうしが自然と組になって、みんなで駅をめざす。
藤木さんは、私のすぐ後ろにいた。それも、1人で。
駅に向かってるってことは、彼もこのまま帰るつもりなのだろう。
次は、いつ会えるかわからない。
もっと彼と話をしたい。

わざと歩みを遅くして、彼の横にならんだ。
勇気を出して、「今日は」と話しかけたとき——、
「藤木さん!」
またしても、例の美人が駆け寄ってきた。
いらだちが胸にわきあがる。
しかも、
「今日はたくさん人がいたから、ゆっくり話せなくて残念でした」
私が言いたかったセリフを、彼女が先に言ってしまった。
この人、嫌い。
そう思ったとき、彼女は華やかなほほ笑みを、私にも向けた。
「一之瀬さんとも、もっとお話ししたいことがあったのに」
さすが、だ。
本当にデキる人は、不用意に敵なんか作らない。
「また、ご一緒させてください」
そう言って彼女はタクシーをつかまえた。

さっきまでのいらだちは、もうすっかり消えていた。
私は、藤木さんの顔を見上げた。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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