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16話 唇の感触


ときめいていることを隠して、
私は「?」という顔を作り、藤木さんを見つめ返した。
もう、まわりの人たちがどんな風に思っても関係ない。
この時間がずっと続いてほしい。

急に、藤木さんの指が、私の唇にふれた。
え……。
なに、なんで、どうして、こんなところで、なにをするの?
パニックになった私に、藤木さんが言った。
「なにか、ついてる」
さっき食べたおつまみが、唇についていたらしい。
はずかしい。
顔から火がでるって、こういうことかも。
「ありがとう」と、消え入りそうな声でお礼を言った。

藤木さんは、なにごともなかったかのように店員を呼んで、
ビールのおかわりを頼んだ。
そして、「今日は、誰のつながり?」と私に尋ねた。
「CXの高田さんの。うちの宣伝部がお世話になったみたいで」
そこで、言葉がとぎれた。
いつもなら、会話を広げようと意識を働かせるところだけど、
今日は頭が動かない。
無意識に、自分の唇に指をあてた。
藤木さんの指の感触がよみがえる。
もう一度、触れてほしい——そんな切なさがこみあげた。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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