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59話 私が出した答え


「帰る。Uターンして」と、私はほとんど命令口調で言った。
「急にどうしたの?」
慶介さんは車を路肩に停め、私の顔を覗き込んだ。
「慶介さん、私の目が優しいから好きになった、って言ってた」
「それは……もちろん、茜の優しいところも好きだよ」
取ってつけたような言い方。
さっき並べた褒め言葉の中に、
『優しい』なんて一言も入っていなかったくせに。

この人は、その場その場でいい言葉を思いつくけど、
心の底からの気持ちじゃない。
ううん、もしかしたら、そのときは本気で思っているのかもしれない。
だけど、その気持ちはすぐに変わってしまうのだろう。
今、この瞬間は私のことを好きでも、
他の女性と会っているときには、その女性を全力で好きになる、
そんなタイプなんだと思う。

あわてる慶介さんを見ているうちに、私は冷静になってきた。

「ハウスキーパーの髪の毛が長かったら、仕事中は結ぶんじゃない?
シャワーのレバーに引っかかるはずないと思う」
彼は黙ったまま、もう何も答えない。
「ごめんなさい。私、慶介さんを信じられない。だから——」
じっと私を見つめている彼の目を、私はまっすぐ見返して、告げた。
「やっぱり、さよなら」

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