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58話 別れたくない


慶介さんはハンドルを握ったまま、動揺を隠さずに言った。
「長い髪の毛? 茜のだろ」
「ううん、黒髪だった。私の髪は茶色だよ?」
「……じゃあ、ハウスキーパーのだな。ハウスクリーニング頼んでるから」
えっ!? そういう可能性は、まるで考えなかった。
——もしかして、全部、私の誤解?

「本当に、俺は茜だけなんだ。茜のことが好きなんだよ。
青山で初めて会ったときから……」

慶介さんの言葉を聞いて、たくさんの想い出がよみがえった。
クラブでの出会い。腕をつかまれてドキッとした帰り道。
エレベーターでのキス。プラネタリウムバー。葉山で一緒に見た夕日。
楽しかった。何度もときめいた。
慶介さんといると、生きているって気がした。
もっと一緒にいたい。
別れたくない……。

だけど、まだ何かがひっかかっている。
疑問をふりはらいたくて、私は尋ねた。
「どうして私を好きになったの?」
「どうしてって……。茜はかわいいし、女らしいし、スタイルもいい。
それから、清潔感があるのもいいよな」
「もういい」と私は言った。「やっぱり無理」

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