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53話 一度きりの恋


1秒でも早く自分を癒したくて、六本木ヒルズでコートを買った。
カシミヤ100%のコートはとても軽くて、体にふんわりフィットする。
カードの支払日が怖いけど、今の私にはこの優しい暖かさが必要だった。
店員にタグを切ってもらい、コートを着たまま、神宮へ向かう。
崇と最後の別れ話をして以来、近寄ることさえできなかった銀杏並木へ。

神宮の紅葉は終わり、茶色い枯葉が地面に落ちていた。
目を閉じると、金色に輝く銀杏並木がまぶたに浮かぶ。
そして「崇じゃなきゃダメなの。別れたくない」と泣いた自分を思い出した。

あの日泣いた私に、言ってあげたい。
崇じゃなくても大丈夫。
恋愛は人生に一度きりじゃない——って。
慶介さんを失ったと思うと、胸が切なくて、痛い。
正直、裏切られたという悔しさもある。
この痛みこそ、恋をした証拠——そう思うと、不思議な気持ち。
慶介さんに出会えてよかった。
こんなに誰かを恋しく思うことができた。
今はまだ辛いけど。いつかきっと、いい思い出だったとほほ笑む日がくるはず。

通りにあるカフェに入ろうとすると、携帯が鳴った。
慶介さんからだ。
『具合、大丈夫?』と書かれたメールを見て、とまどった。

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