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52話 終わりを告げる音


洗面台の上に、化粧品セットをひとつずつきれいに並べた。
私のと、あの女性のと2人分。
そして、手帳の1ページをやぶって「さよなら」と書き、
化粧水のボトルの下にはさんだ。

そこまですると、涙がこみあげてきた。
思いっきり泣きたい。泣きわめきたい。
わあわあ大声をあげて、部屋の中にあるものを手当たり次第に壊して、
「嘘つき!」と怒鳴って——そうしたら、スッキリするのだろうか。
ううん。そんな子供じみた真似をしても、何も解決しない。
結局、私は彼のオンリーワンになれなかった。それだけのこと。
ぐっと涙をこらえて、慶介さんの部屋を後にした。

集合ポストで慶介さんの部屋番号を探し、鍵を入れる。
カシャン——……金属音が響く。
なんて、淋しい音なんだろう——これが、私たちの終わりを告げる音。
そう思ったら、ガマンしていた涙がこぼれた。
早くここから離れたくて、小走りに外へ出る。
涙で濡れた頬に、冷たい風が当たった。
いつのまにか秋は過ぎ去って、季節は冬へと移っていたらしい。
そうだ、新しいコートを買おう。
優しいぬくもりで私を包んでくれる、カシミヤのコートを。
そうしたら、慶介さんがいない寒い冬でも、きっと大丈夫——。

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