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51話 嘘つき


知らない誰かの、基礎化粧品セット。
私の頭の中は真っ白になっていた。
出しっぱなしのシャワーの音だけが響いている。
ぼう然としたままシャワールームに戻って、シャワーを止めた。
そのとき、気づいた。
湯温調節のレバーに髪の毛が挟まっている。
指でつまむと、するすると抜けた。
長くて、黒い、女性の髪——。

酔いがさめたから気づいたのか。
それとも、疑いが生まれたから気づいたのか。
六本木で見かけた長い黒髪の女性の姿が、はっきりとよみがえる。
ジグソーパズルのピースが埋まるように、
すべてに納得できる答えが見つかった。

慶介さんは、嘘をついていた。

私がこの部屋に来るたびに、あの人の化粧品セットを袋につめて、
あの人が来るたびに、私の化粧品セットを袋に入れる。
そんな細かいことをしていたのかと思ったら、情けなくて、笑いたくなった。
そして……そんなカッコ悪い男を好きになっていた自分が、何よりも情けない。

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