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36話 土曜日の電話の相手


慶介さんはジャケットの内ポケットから
携帯を取り出して、着信番号を見た。
携帯はまだ振動し続けている。メールじゃなく、電話ってことだ。
だけど、慶介さんは席を立つでもなく、だまって携帯をポケットに戻した。

あれ?
慶介さんの表情は淡々としている。
こんな美しい景色を前にして、ステキなランチを取っている最中の電話。
仕事の連絡なら、少しくらい落胆しそうなものだし。
久しぶりの友人からなら、「お」と驚いた顔をするはず。
今の電話はどちらでもない。
よく連絡を取り合っている、親しい人からの電話だった確率が高い。
土曜の昼下がりに電話をかけてくるのは、どんな関係の人なのだろう?

あの、長い髪の女性の後姿が、ほんの一瞬浮かんで、消えた。

窓ガラスの向こうで、大きな波が白く光った。
海のブルーを見ていると、冷静になれる。
あの女性はただの同僚だったと、さっき納得したはずなのに。
心の奥のわだかまりを、完全に消すことができていない自分に呆れる。
このモヤモヤを消し去るために、私は尋ねた。
「電話、誰からだったの?」

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