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20話 芯のある人


冷酒で乾杯し、小鉢に盛られた料理に手をつける。
この前会ったときは、ナイフとフォークだったから気付かなかったけど、
慶介さんは箸の持ち方がきれい。
昔、祖母に言われた言葉を思いだす。
『人を見るときには、箸の持ち方を見なさい。
箸をきちんと持てる人は、人間の核の部分がしっかりしているから』
彼に惹かれてしまう理由が、少しだけ分かった。
いきなり腕をつかんだり、突然キスしたり、強引な人だけど、
彼の真ん中にはちゃんと芯がある、そんな気がする。

蕎麦屋を出ると、彼は「もうちょっと飲もう」と言って、タクシーをつかまえた。
そして、近くにある白いビルの前で降りた。
エレベーターに乗り、5階のボタンを押す。
あの日のことがよみがえり、キスされるかも……と緊張した。
だけど、彼は階数表示を見つめたまま、キスどころか、私を見ようともしない。
ほっとしたような、がっかりしたような気分。
すぐに、エレベーターは5階についた。
ドアを開けた彼にうながされ、店に入る。
「すごい……きれい」
思わず声が出た。暗闇の中、たくさんの星が輝いている。
ドーム型の天井が、プラネタリウムになっているのだ。
感激する私を、慶介さんが嬉しそうに見ていた。

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