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9話 忙しいなんて言い訳


慶介さんが勤めている会社は、六本木ヒルズの中にあるという。
ヒルズに着いたところで、携帯で連絡を取り合って合流した。
それから、ハイアットにあるステーキハウスに行った。
この店は、オーク材をふんだんに使った重厚で洗練された雰囲気で、
お客の半分以上が外国人だった。

隣のテーブルでは、アメリカンサイズのコーラと英字新聞を手に、
男性が1人で食事をしている。
私の視線をたどり、慶介さんが説明した。
「きっと彼は、この後、仕事に戻るんだと思う。
実は俺も、食事が終わったら、会社に戻らなくちゃいけないんだ」
「抜けてきたってこと?」
「うん。月曜までに作らなくちゃいけない資料があって」
「じゃあ、こんなところでノンビリ食事している暇はないんじゃないの?」
「言っただろ。楽しいことがある人生がいいって。
好きな人に会う時間は、どんなに忙しくても絶対に作るんだ。
こんな風に仕事を抜け出してでも」

好きな人……なんて、社交辞令かもしれないのに、ときめいてしまう。
このセリフを、崇に聞かせてやりたいと思った。
「忙しいから会えない」なんて、ただの言い訳。
本当は心が離れてしまってたんだってこと、私、気付いてたよ。

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