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星影のビート-11

蓼科の夜は寒く、防寒着を重ねても体は小さく震えた。
ただ夜空の美しさはただ事ではなく、
散りばめられた星は、冷たく神聖な光を刺すように放っていた。

山荘のテラスには、太さの異なる天体望遠鏡がにょきにょき生え
イチもその仲間達も、思い思いにレンズを覗き込んでいる。

「これがアンドロメダ星雲。残念ながら渦までは見えないけど」

そこには白い光がにじむようにして、星空に広がっていた。
「これ、ものすごい数の星が集まってるんだよね」
「そう。そして今見える光は230万年前の光」

「あと、今日は火星が見ごろみたい。ちょっと待ってね」
イチは手袋をとって、男の人にしては細い指に何度も息を吹きかける。
その時わたしは何の意識もせず、まるでトンボでもとるように、
イチの指をじぶんの手で、ひょっとつかんだ。

「手、冷たくなっているね……」
眼鏡の向こうで、イチの瞳はさっき見た星雲のように、
楕円形の光を浮かべて、揺らいでいた。

唇がかすかに動いたけれど、彼の言葉は読み取れない。
しばらくして同じ温もりになったその指を、わたしはそっと離した。

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