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4話 よけいに孤独


竹中さんのオフィスはこの近くにあるので、カウントダウンの
人ごみの中を帰宅できるよう、通行許可証が発行されている。
竹中さんが通行証を見せると、警官は私たちのバッグをチェックし、
「通れ」というジェスチャーをした。
カウントダウンに最高の場所、タイムズスクウェアの真ん中に
たどり着いたところで、竹中さんが手をあげた。
「じゃあ、僕はここで帰ります。カウントダウン、楽しんで!」
自宅では、新婚の奥さんと赤ちゃんが待っているのだという。
「本当にありがとうございました」
藤木さんと私は、声をそろえてお礼を言った。

そして私たちは、2人きりになった。

私は横にいる藤木さんの顔を見上げて、「寒いですね」と話しかけた。
彼は「氷点下7度だそうですよ」と言って肩をすくめた。
だけど、彼は寒いのは平気なんじゃないか、という気がする。
きっと彼のクールな目が、強い意思を感じさせるせいだ。
「藤木さんはどうしてNYに?」また、私から尋ねた。
「大勢の中にいると、よけいに孤独を感じる、ってありませんか?」
「え?」
「飲み会でバカ騒ぎしている最中とか、雑踏を歩いているときとか。
まわりに人がたくさんいるのに、何の意味もない。
俺はその中に交われない。そんな孤独……」
彼の言葉の意味が、わかるような、わからないような……。
ただ、彼が抱える闇が、私をぞくぞくさせた。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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