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guest24「はじめてぐらいの恋」


「コーヒー、ブラックで」
古めいたいかにも繊細なイスが、
僕の体の重みでキシッと鳴った。
「ホワイトチョコレートモカください」
目の前の彼女が言った、
甘ったるい注文をうらやましいと思ったことは、
内緒にしておこう。

今日は、坊主頭をニット帽で隠して
デートにやってきている。
デートといっても、非公式なものだけれど。
世の中の高校生たちは、
きっと器用に恋愛をしているに違いない。
だけどそんな器用さは、僕には備わっていない。
そもそも備わっていたとしたら、
坊主頭にしなきゃいけない野球部になんか入んなかっただろう。

「ちょっとお茶しようよ」
彼女がそう言ったときには、
チョコレートだらけのカフェを調べておいて
よかったと思ったものだ。
甘党の彼女はきっと喜ぶだろうと。
坊主頭で隠されてはいるけれど、
本当の辻内君は、相当のしゃれ者なんだと、
彼女に尊敬の目で見られるはずだと。

「あっ、ここでいいや」
彼女は道端で猫を見つけて立ち止まり、
猫が座り込んでいるその場所が、
喫茶店の目の前だと気づいた彼女は、
すたすたと店内へ入っていった。
「軽食・喫茶 天国」と書かれたその白い扉をくぐるとき、
僕がそっとため息をついたことは、内緒にしておこう。

「いらっしゃいませ」
コーヒーの香りの中で、
ダンディーの代名詞のようなおっさんが、
僕たちに微笑んだ。

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