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guest21「姉妹ですから」


嘘をつくのがうまくなった。
「仕事どうなの?」
「平凡だけど、楽しんでる」
何気ない休日の何気ない質問に、何気ない嘘をついた。
「ふーん、そう」
それが嘘なんて知らない姉は、やわらかく微笑んだ。
こうして姉と並んで歩くのはいつぶりだろうか。
「銀座も変わったわね」
と、姉は丸の内を歩きながらつぶやいた。

小さい頃、よく美人な姉と平凡な妹だと言われた。
大人になった今では、化粧のおかげで美人姉妹と呼ばれるけれど。
小学校に上がる前は、人形のような姉の横にいることが誇らしかった。
少しずつ大人になって、それが疎ましくなり、疎ましいからこそ、
私はこんなにきれいになれたんだと、今では思う。

「ねぇ、お腹すかない?」
ほんの3時間前にイタリアンランチを平らげたはずの姉が、
そう聞いてきた。
「すかない」
そう私が答えたのと、姉が「ここにしよう」と、
一軒の喫茶店に入ってゆくのはほとんど同時だった。
その喫茶店の白い扉には、「天国」と書かれていた。

姉はいつも微笑んでいて、
姉の周囲にはいつも笑顔があふれていた。
姉は人と競争することが嫌いで、大学を卒業するのと同時に
4年間付き合っていた青森のリンゴ農家の跡取り息子の元へ
嫁にいってしまった。もう5年も前の出来事だ。

久しぶりに会った姉は、以前よりきれいになったようだった。
「なんだかうらやましいな」
そんな姉がつぶやいた。

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