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1話 出会いの瞬間


冬のNYは、キャラメルポップコーンの甘い匂いと、
マンホールから立ち上る白い蒸気、そして刺すような冷気が漂っている。
「もう1人、日本から旅行で来ている人がいるんですよ。
その人と合流してから、タイムズスクウェアに案内しますね」
竹中さんは、私がはぐれないよう気を配りながら歩き出した。
彼は友だちの友だちという遠い縁で、今日はじめて会った人だ。
NYでカウントダウンをしたい。そんな私のわがままのために、
12月最後の日の貴重な時間を、こうしてさいてくれている。

プルル——竹中さんの携帯が鳴った。
「Hello. あ、藤木さん? 今どこですか?」
竹中さんがあたりを見渡す。
「僕は5thにいます。そのまま、まっすぐ歩いてきてください」
NYの路上は、様々なタイプの人間であふれている。
白人、黒人、アジア人、太った人、やせた人、背が高い人、低い人。
こんなに大勢の人の中で、初対面の人と無事に会えるのだろうか。
目を凝らして、白い蒸気と人ごみの向こうを見た。
背の高い人影が、まっすぐ近づいてくる……日本人っぽい。
「竹中さん? 藤木です。はじめまして」

彼がほほ笑んだ瞬間、NYの喧騒が消えた。
ラジオのチューニングが合って、全てがクリアになるみたいに。
まわりの景色が消え、藤木さんの姿だけが浮き上がって見える。
はじめて会った人なのに、なぜか懐かしい気がするのは、なぜ?
懐かしくて、胸がしめつけられる——。
【登場人物】
一之瀬莉緒(28) 化粧品会社の広報。ニューイヤーのカウントダウンのため、1人NYを訪れ……。
藤木和哉(29) テレビ局のディレクター。NYのカウントダウンで莉緒と知り合う。
古川渉(29) 食品会社の広報。仕事がらみで莉緒と知り合いに。時々食事に行く仲。
奥村千紘(52) バー「ブパサニワット」のオーナー。
大谷美紀恵(33) 莉緒の上司。

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