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冷めたピザのいただき方-7


ピンポーン──とチャイムが鳴っても、すぐには声も出ない。 ゆっくりと立ち上がり、
ドアのノブに手をかけて回すと、 そこには桐谷さんが、ピザの箱を抱えて立っていた。

やさしい顔だ。でもお腹が痛すぎて、もう立っていられない。
「あの、あの、お客様、どうしたんですかっ!」
「……ごめんなさい。急にとてもお腹が痛くなって」

桐谷さんが、わたしの肩に手をかける。大きくて暖かい手。
ああ、わたしはこの人に、本当に会いたかったんだ。
「わかりました。今、救急車呼びますから」
「すみません、実はわたし……」

そのあとのことは、記憶が曖昧だ。 おそらくわたしは桐谷さんの手配で、
救急車で病院へ運ばれたのだ。 病名は虫垂炎。すぐに手術となり無事に終わった。

恐ろしい病気でなくて、本当によかったと思う。
でもお医者様からは「もっと早く来なさい!」とひどく叱られた。
もう少し来院が遅かったら、たいへんなことになっていたらしい。
お見舞いに来てくれた会社の人にも、迷惑をかけたことを平謝りし、
わたしは5日間で病院を退院した。

そして次の土曜日、メニューにのっていた住所をたどり、ピザ屋に行った。
考えたら、まだ代金を払っていなかったのだ。申し訳ないことだ。

ピザ屋さんは大通りから一本入った、住宅街の中にあった。
表札には「桐谷」とある。え、ここってあの人の自宅?
「お持ち帰りもできます」のポスターがある引き戸をあけると、
中ではパイプ椅子に座った桐谷さんが、新聞を読んでいた。

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