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冷めたピザのいただき方-5


それでもその場のノリで、やっぱり由布子にしゃべってしまった。
「いるけど……名前しか知らない人なの」
「充分よ。わたしなんて、名前も知らなかったんだから」
「でも、毎月ピザの配達に来る……それだけの人なんだよ」

そうなのだ。あまりに寂しいこの事実。

「でも毎月っていうなら、かなり前から知ってるのよね?」
「うん。だけど、もしも万々が一付き合えても、
 ピザ屋でバイトの彼氏って、どうなのかなあ……とか」

「うふふ、本気で付き合った時のこととか、考えてるんだ」
「え、まあ……そういうことになるのかも」
人に話してわかった。予想以上に桐谷さんを好きだったことが。


それから由布子とは大学時代の思い出や、将来の夢、
そして夕飯に鍋をつつきながら、おたがいの恋の話を延々とした。

深夜になると、わたしと由布子は布団を並べて横になった。
部屋を暗くすると、カーテンの隙間から、
街の明かりが青みがかった淡い光が、天井に揺らめいた。

こうしていつも一人の部屋に、大好きな友だちがいるだけで、
普段とぜんぜん、違った場所にいる気がする。
不安も心細さも消えて、とても幸せな気分。

でももし隣にいるのが友だちではなく、恋人と呼べる人だったら。
その幸せは、どのくらいの量になるのだろう。 想像もつかなかった。
頭に浮かんだのは、ピザ屋の桐谷さんの顔と大きな掌だけだ。

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