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63話 夢が見えない



土曜日、桃子はビジネスセミナーに参加した。
セミナーは、28歳で起業した斎藤美鈴の体験談から始まった。
「この後は、『セルフコーチング』に移ります。
みなさん、これから実現したいことを紙に書き出してください」
(やりたいこと……特にないんだけど)桃子はペンを片手に悩んだ。
隣の席の男性は、スラスラと書き込んでいる。
『カジュアルフレンチの店を持ちたい』という文字が見えた。
(みんな、ちゃんと目標を持って生きてるんだ)
桃子はため息をついた。

セミナーが終わった。
帰り支度を始めた桃子は、隣の席の男性と目が合い、反射的にほほ笑んだ。
彼の回答を盗み見たことを思い出すと、恥ずかしい。
彼は、桃子のほほ笑みを好意と受け取ったようだ。
「もし時間があったら、このあとお茶しませんか?」と誘ってきた。
桃子は時計を見た。まどかたちとの食事の約束まで、まだ時間がある。
「1時間くらいなら」
「よかった。あ、俺、浅生光也です。初めまして」
光也の笑顔を見て、桃子は思った。(イケメンだし、優しそう……)
だけど優一郎のことを思い出し、心にバリヤーを張った。

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