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38話 真実から目を背けて



奈緒がキッチンに立つと、柿本は当然のようにリビングのソファに座った。
『手伝う』なんて気は、全くないようだ。
マザコン、ナルシスト、わがまま……そんな単語が奈緒の頭に浮かぶ。
だけど医者との結婚に憧れる奈緒は、柿本の欠点をいい方に解釈しようとした。
(忙しい仕事をしてるんだから、母親に掃除を頼んだっていいじゃない)
(仕事の自慢をするのは、頑張った仕事を褒めて欲しいからだよね)
(料理だって、手伝ってもらうことなんてないし)
……そう考えると気が楽になった。

ジャガイモの皮をむいていると、咳が出た。喉の奥が少し痛む。
薬が切れたのか、ゴホゴホと咳が続く。
リビングで医学書を読んでいた柿本が、心配そうに顔を上げた。
「もしかして、風邪ひいてるの?」
「大丈夫。ちょっと喉が痛いだけだから」
奈緒の答えを聞いて、柿本の顔色が曇った。
(心配してくれてるのかな。医者と結婚したら、病気の時も安心だよね)
なんて考えていた奈緒に、柿本が言い放った。
「うつされたら困るだろ!!
風邪をひいてる時に、人に会いに来るなんて非常識だよ!」
あまりにも冷たい言葉に、奈緒は凍りついた。

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