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31話 自慢話



翌日の日曜日。奈緒は突然、柿本に誘われ食事をすることになった。
恵比寿の駅から少し歩いた場所にある、和食レストランで待ち合わせた。
「昨日の今日で、来てもらえるなんて嬉しいな」
もともとクールな雰囲気の柿本は、口角をわずかに上げて微笑んだ。
奈緒も、にっこりと微笑み返す。

奈緒が働く製薬会社の営業マンたちは、よく医者の悪口を言う。
医者の前ではペコペコと頭を下げている分、ストレスが溜まるのだろう。
だけど奈緒は事務員だから、直接、医者と仕事のやりとりをしたことはない。
だから、営業マンたちのように、医者を毛嫌いする理由はなかった。
それどころか、柿本が外科医だということは、恋愛相手として好条件だ。

Lの字に並んで座っていた柿本が、だんだん、奈緒の方に体を移動させてきた。
少し酔っているようだ。
「手術っていうのは、ある種の芸術だと思うんだ。
だって、こんなに細い血管を縫い合わせるんだよ。想像できる?」
そう言って柿本は奈緒の手を取り、青白い血管の上に指を這わせた。
「僕じゃなきゃできない手術もあるから、よくポケベルで呼び出されるんだ」
自慢げにベルトのポケベルをチェックする柿本を見て、奈緒は嫌悪感を覚えた。
(この人って、ナル過ぎて気持ち悪い……)

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