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Good-by ダーリン-1



潮の匂いとともに、海鳴りがかすかに聞こえてくる。
この海岸に近い公営キャンプ場の入り口には、
たくさんの薄いピンクの浜昼顔がよしずにからまって
潮風に震えていた。
今日と明日の土日、大学の時に所属していた
演劇サークルの合宿に参加する。

携帯のサブディスプレイは「10:45」を表示していた。
10時の定刻から30分以上遅れて入るのは、
卒業生の作法でもある。
だがなかなかキャンプ場に入らない理由は、他にもあった。

わたしはサンダル履きの足を片方浮かし、
踵をさすって砂を落とす。

そうしている間に、遠くから女のコの呼ぶ声が聞こえてきた。
「桂せんぱーーいっ!」
見ると大学時代、いちばん懐いていた後輩の松岡が手を振りながら駆けてくる。
わたしも微笑んで手を振った。

「先輩、よく来てくれました。今回、先輩に会えるのがすっごく楽しみで!」
「ありがとう、わたしも松岡に会いたかった」
松岡の微笑みは、あいかわらずとてもかわいい。
「どうですかお仕事は。きっと先輩のことだからバリバリなんでしょうね」
無邪気な笑顔でいわれると、背筋にスッと冷たいものが走る。

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