お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

case20 高木りか〜社会人3年目

「あー、金がない」
財布の中を覗きこんで、ため息をつく。
わたしは大学を卒業して、
大学時代からアルバイトをしていたデザイン会社に入社した。
そこでの給料は驚くほど低く、
東京の最低賃金を知りたかったら、
うちの給料袋を覗き込めばいいぐらいだ。
「あー、金がない」
マツキヨで買った、525円の化粧水をはたきながら、また呟く。
肌が丈夫でよかった。

毎月の給料から、5万円を母に渡している。
母はそれを家計の足しにせず、
わたしに内緒で定期預金に預けてくれている。
母の愛に感謝しつつ、
わたしはその5万円が今ほしいのよと、ひとりごちる。

以前の母は、典型的な優雅な専業主婦だった。
生け花なんてハイソな教室に通い、
使わないダイエットグッズを買い込む。
わたしも大学時代は好きなデザイナーの服を買い込み、
青山の美容院に月に2回通った。
オリジナルであることより、最先端であることを選び、
「デザイン会社でバイトしているの」と言う響きに酔いしれ、
稼ぐ以上に浪費した。
父はそんなわたしたちを支えるために働きづめ、
わたしが大学を卒業すると同時に、崩れ落ちるように他界した。
それからの母は、急にお金にシビアになった。

お役立ち情報[PR]