お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

case19 田中瑞江〜社会人11年目、派遣社員1年目

「結婚するので会社辞めます」
こう言ったとき、次長は微笑んで「おめでとう」と言った。
2カ月前に入社3年目の女の子が同じことを言ったとき、
次長は残念がって引き止めたのに。
まぁ、10年もこの会社にいた私なんて、引き止めるのも白々しいか。

「10年間たくましく、この部署を支えてくれた田中君を失うのは、
残念ですが……」
次長は送別会でこう言った。
私の後釜は、総務から異動してきた入社2年目の恵子だ。
当たり障りのない笑顔で、もうこの部署のアイドルになりつつある。
私だって10年前はそうだったのに。

「ただいまぁ」と、私は先月引っ越してきたばかりの
マンションの扉を開けた。「おかえり」と、返事が返ってくる。

1LDKのさほど広くはないこの部屋で、
私は彼氏の山下大樹と暮らし始めた。
10カ月後には、彼氏から夫に彼の肩書きが変わる。
私は33歳。彼氏は27歳。
3年前に、「友人の紹介」と言う名のコンパで知り合った。
人数あわせで連れてこられたらしく、1人だけ20代だった彼は、
「30歳にもなると、飛び交う下ネタが下品じゃないんすね」と、
わけのわからないところで感心していた。
彼とは義理っぽく連絡先を交換した。

だから翌日本当に電話が来たときには驚いたものだ。
お台場に行ってカラオケしたり、
映画見てカラオケしたり、ドライブ行ってカラオケしたり、
しばらくは気楽に友達づきあいをしていた。
花火を見に行った時に、彼から手をつないできた。
正直、ビックリした。正直、久しぶりにドキドキもした。

彼は5年間付き合った高校時代彼女と別れて以来、
女性とは無縁の生活を送っていたらしい。
恋の駆け引きとか、イニシアチブとか、
何も考えずに愛情を注いでくれる彼が、
なんだかとても新鮮で、今とても幸せだ。

お役立ち情報[PR]