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case10


  ちょっと人がうらやむスーツを着て、
学生時代に夢見た仕事についている。
自由が丘で一人暮らしをしていて、スタイルだって悪くない。
絵に描いたような、上昇志向でバリバリのキャリアウーマン。
これが人の持つわたしのイメージだ。
だけど現実は少々違う。
スーツだってバーゲンのときに額に汗して手に入れたもの。
自由が丘のアパートは駅から20分歩き続け、
もはやお洒落さのかけらもない商店街が程近い下町だ。
ブラだって上げ底だし。

本当のわたしの姿より、ちょっといいものを周りは見ている。
それは今に始まったことじゃなく、
一番の親友たちだって例外じゃない。
小学生の時から背が高くて、運動会ではいつもリレーの選手。
ルールを破る必要がなかったから、
いつも優等生だねって先生にほめられた。
気がつけばいつもわたしは同級生たちの中でも
「お姉さん」のような、「お母さん」のような存在になっていた。
本当はわたしだって、誰かに頼りたいのに。


午後6時10分。定時はとっくに過ぎている。
今日は高校時代からの親友たちと、
地元・清瀬のファミレスでご飯を食べることになっている。
今PCを落とせば集合時間に間に合う。
繁忙期が過ぎた今、社内に残っているのはわたしと、
恐妻家で有名な課長ぐらいだ。
課長は暇そうに頬杖をつきながら、PCを覗き込んでいる。
もう1つだけ、見積もりを作ってから帰ろう。
急ぎの仕事ではないけれど。
「品川は本当に仕事熱心だな」と、人を見る目のない課長が言った。

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